• 検索結果がありません。

信用格付におけるESG要素の考慮の必要性 ニュースリリース | 日本格付研究所 JCR 17d0558

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "信用格付におけるESG要素の考慮の必要性 ニュースリリース | 日本格付研究所 JCR 17d0558"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1/ 3

http://www.jcr.co.jp/

17- D- 0558

201 7 年 9 月 2 9 日

信用格付に

るE S G 要素の

考慮の

必要性

株 式会 社日 本格 付研 究所 (J C R ) は 、2017 年 9 月 15 日 に、 国連 責任 投資 原則 (UNPRI) が 実施 する Initiative on E SG in C redit Ratings Statement に署名しました。J C R はこれまでも C SR などの要素を信用格付 (格付)に反映させてきましたが、今回の署名を契機に、格付における E SG(環境・社会・ガバナンス)の 要素(E SG 要素)の考慮の必要性について、現状を整理し説明することとしました。

1.

はじ

J C R ではこれまで、C SR(企業の社会的責任)の観点を取り入れるかたちで、E SG に関連する事項を格付 に織り込んできました(2004 年 12 月 28 日付ニュースリリース「C SR(企業の社会的責任)の格付け上の位 置付けについて」等ご参照。)。近年では、「コーポレートガバナンス・コード」と「スチュワードシップ・コ ード」の 2 つのコードが定着し、事業活動、投資行動が変化しつつあります。E SG の概念に関する理解も広 まり、対応を進める事例が目立ってきています。欧米をはじめとする各地域では、日本に先行して E SG 投資 の動きが活性化しており、グローバル化が進む日本企業では特に E SG に関する取り組みが強化されています。

J C R が定 める 格付 方法の 様々 な項 目を 評価す る際 にも E SG 要 素 を考 慮する 必要 があ りま す。 本稿で は E SG 要素の観点からまとめ直し、改めて具体的にどのような事項が格付に影響を与えるかを説明します。

2.

総論

J C R では、E SG 要素が信用格付に影響を与える可能性に関し、次の事項に留意しています。 E SG 要素が発行体の持続可能性に影響を与えること

E SG 要素が債務償還に必要なキャッシュフロー創出力に影響を与えること E SG への取り組みが資金調達力に影響を与えること

E SG 要素のうち、3年程度の範囲内で顕在化する可能性が高いものを、J C R は格付に織り込みます。これ は、J C R が、先行き 3 年間程度の債務者の状況および事業環境を展望して格付を決定しているためです。

J C Rでは、発行体の一般的な情報開示を通じ、E SGに関する発行体の状況を把握しています。しかし、多 くの日本の発行体が E SG 関連情報の開示に関し、内容充実に向けた検討を重ねている状況にあり、現状では 充分な情報開示に至っていない例も多くあります。これを補うため、J C R では、マネジメントインタビュー などを通じて、より詳細な情報入手、正確な理解に努めています。特にガバナンスのあり方などを確認する にあたっては、マネジメントインタビューの重要性が高いと考えています。

3.

発行体の

持続可能性へ

影響

J C R では債務者の債務全体を包括的に捉え、長期発行体格付を付与しています。長期発行体格付は、ゴー イングコンサーンとしての債務者の信用力についての評価であり、債務者が継続して事業を続け、債務償還 に必要なキャッシュフローを継続的に創出できるかの評価です。E SG 要素は債務者の事業継続性と関連性が 高いため、この点から E SG に関する評価は格付上軽視できなくなっています。

(2)

2/ 3

http://www.jcr.co.jp/

4.

発行体の

創出力へ

影響

格付は「格付対象となる債務について約定通り履行される確実性」を示したもので、返済原資となるキャ ッシュフローを評価することが重要です。J C R では、E SG 要素について次のように整理しています。 (1) E nvironment(環境)

環境に関する事項については、産業特性そのものに対する評価と、個別の企業ベースの評価の両面からア プローチする必要があると考えています。

事業展開の中で温暖化ガス排出量が多いなど環境対応を迫られる業界では、排出量削減、製品の環境貢献 を進める他、中長期的には事業ポートフォリオの転換を求められる可能性があります。こうした業界では事 業構成やキャッシュインのあり方そのものが抜本的に変化する可能性がある点に留意していますが、格付に あたっては、当面 3 年程度の期間に顕在化しうるリスクに主眼をおいて評価しています。

個別企業の取り組みについては、キャッシュイン、キャッシュアウトについて次のように精査しています。 キャッシュインの面では、環境への配慮を重視する消費者や企業が増えつつあることを踏まえ、環境に配 慮した製品・サービスの有無、その競争力などに着目します。

キャッシュアウトの面では、環境対応のコスト負担の大きさを確認します。特に、製造業では、原材料調 達、生産工程における排出物などに関し、環境的配慮を求められ、厳しい規制の影響を受けることも多くな っています。こうしたことへの対応には原料転換、設備投資、研究開発投資など一定のコストが必要になっ ています。

(2) Social(社会)

企業は単独で存続しているのではなく、多くのステークホルダーとの関係の中で成り立っています。株主、 取引先、消費者、従業員など、ステークホルダーとの関係を適切に維持することは、企業の円滑な事業展開 に不可欠となっています。

特に、近年は人手不足が顕著となる他、労働環境の改善に関する社会的要請が強くなっており、これらの 点での取り組みが企業の競争力、キャッシュフロー創出力を左右するようになっています。

(3) Governance(企業統治)

企業が持続的に事業を展開するには、経営に関する意思決定の透明性、子会社も含めた適切な管理・監督、 コンプライアンスの徹底がますます重要になっています。

事業活動のグローバル化が進む一方、外部環境は短期間に大幅に変動することも多く見られます。こうし た環境下、大型投資などに関し、迅速で正確な意思決定を行うためには、充分な議論を確保する、経営の仕 組みづくりが不可欠です。的確な経営判断がキャッシュフローの適切な配分、投資につながり、将来のキャ ッシュフローをもたらすと考えられます。

(3)

3/ 3

http://www.jcr.co.jp/

5.

発行体の

資金調達力へ

影響

企業が継続的に事業を展開するにあたり、円滑かつ適切な資金調達が不可欠です。格付上も、資金調達力 は重要な評価項目になっています。近年、投資家が投資判断を下すにあたり、E SG 要素の重要性が増してい るため、E SG への取り組みが資金調達に与える影響も増加しています。

6.

E S G に

関連する

が格付に

与え

影響

E SG に関連するリスクイベントが定性・定量評価の両面で格付の変更要因となりうる例も出てきています。 このため、J C R では、常にリスクイベントの有無をモニタリングし、イベントが発生している場合には、そ の概要と影響の大きさを把握して格付に反映させています。

評価項目やその重要性は個々の案件ごとに異なりますが、主な確認事項の例として次のような項目が想定 されます。

(例)

・原因究明、再発防止に向けた取り組みが適切に進められているか ・規制、処分などにより事業展開が制約されないか

・レピュテーションの悪化が減収や競争力低下につながらないか ・損害賠償、補償などに伴い多額のキャッシュアウトが発生しないか ・改善策が大幅なコストアップを伴わないか

・金融機関取引の悪化などにより、資金調達に悪影響がないか

(担当)涛岡 由典

■留意事項

本文書に記載された情報は、J C Rが、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また

はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、J C Rは、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、

的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、J C Rは、当該情報の誤り、遺漏、また

は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。J C R は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、

金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因

のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、J C Rの格付は意見の表明であ

って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも

のでもありません。J C Rの格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として

発行体より手数料をいただいて行っております。J C Rの格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、J C Rが保有しています。J C Rの格付データ

を含め、本文書の一部または全部を問わず、J C R に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。

■NR S R O 登録状況

J C R は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating O rganization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ

スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。

■本件に関するお問い合わせ先

参照

関連したドキュメント

事業セグメントごとの資本コスト(WACC)を算定するためには、BS を作成後、まず株

・ 継続企業の前提に関する事項について、重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認

繰延税金資産は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26

事前調査を行う者の要件の新設 ■

○ 交付要綱5(1)に定めるとおり、事業により取得し、又は効用の増加し た財産で価格が単価 50 万円(民間医療機関にあっては

WEB 申請を開始する前に、申請資格を満たしているかを HP の 2022 年度資格申請要綱(再認定)より必ずご確

所得割 3以上の都道府県に事務所・事 軽減税率 業所があり、資本金の額(又は 不適用法人 出資金の額)が1千万円以上の

③  訓練に関する措置、④  必要な資機材を備え付けること、⑤